Loading 0%

and319

H

  • About
  • Note
  • Contact

随筆
2023.07.26

紫の風景

随筆, 2023.07.26

京都で出会ったあの兄さんには多分もう会えない。バーテンやる前は元々ホストしてて、でもってもっとルーツをさかのぼって話してくれて、じぶんは孤児だって言ってみてくれた。

わたしは、わたしを知るひとは、わたしがちょっとおかしいぐらいに目の前にいる人間に集中して話し込んでしまうアレ、もちろんその時もそうなる。

並の人なら引き返すところでも、彼は朝日がのぼっても自分の人生を回想しつづけて、わたしは問いかけを返しつづけた。互いに応答は途絶えない。で、ある地点で彼は、自分は両親はおろか一切の家族を知らず施設で育ったという人生なので、自分にはひとをひととして受け入れることは簡単ではないと、しっかり言った。

たしかに、彼の話してきた小さなエピソードには、どれもひとがひとではなくなる恐ろしさが真っ暗く広がっていた。だけど、彼は笑いながら終始やわらかな顔で会話をつむいでいる。あれ。もしや、なにかをこの一夜で賭け合ってる・・・。そう気づいた時、日陰者のおしゃべり見聞は差し込む朝日とともに、一筋の緊張に変わる。

「おれが見ても、おもしろい映画あります?てか、つくれます?」

やっぱり、そう。そうだ。そうよな。そうだわ。然るべき。
ということで、そこからわたくしはうたをうたったり、ためらいなく私的に詩歌を詠むやうにいたしました。ちなみにその時の私の返答は、

「映画にはそのちからはないです。わたしがあなたを思ったおもしろさを少しだけいれるので、それを見つけてほしい」

でした。ザコい。情けない。ウォーリーを探せでしか分かり合えなかった。保育園児の初期設定おともだちコミュニケーションの次元と全く同じである。だけど、もし再会して、また賭け合いになっても平気かなとは思えてる。あ、作品つくったりしたから。

でも、もう多分会えない。なんというか、そういうつもりの賭け合いだったと思う。お互い。どうでもいいと思える次元が一致しただけで、なにがどうとかあれがそうとか、腹の中ではお互いに心底どうでもいいと思ってた。結局、生きてますか死んでますかの話になっちゃうから。

ちゅうこって、わたしもまた作品やったりしたんすけど。まあそれはええすは。結局、しぬまで覚えてる賭け合いもまた、やっぱりひとつの映画だと思うわ。兄さん。

布村喜和 / 映画監督 Yoshikazu Homura / Film Director

About

3月19日生まれ。山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒。 2017年3月19日、HOMURA & a 319 Filmworks Blue 設立。シネマトグラフ発明に始まる"相対的なる映画史"と、 インディペンデント映画やアートフィルムが接近を試みる"絶対的なる映画史"。 広い世界と無限の観客、しかし、自己の所在は依然として分からない。 ただ、映画をつくりつづける。生きている。

Born March 19th. I am from Yamaguchi Prefecture. He graduated from Osaka University of Arts and Sciences. On March 19, 2017, HOMURA & a 319 Filmworks Blue was founded. "Cinematograph" Relative movie history starting with invention, "absolute movie history" where independent films and art films try approaching. Wide world and infinite audience, but I still do not know where I am. However, he continues to make movies. I am still alive, today.

Award

DAIGEI FILM AWARDS 2013 上映
ぴあフィルムフェスティバル2014 1次審査通過
日本芸術センター 第六回映像グランプリ 本選上映
第3回 三軒茶屋映像カーニバル 奨励賞受賞
(映画監督・松井良彦氏 選出)

YCAM10th FILM by MUSIC
「架空の映画音楽の為の映像コンペティション」入選
(音楽家・坂本龍一氏 選出)

DAIGEI FILM AWARDS 2013
 / Screening

PFF 2014
 / First pass judging

The 6th Video Grand Prix of the Japan Art Center
 / Screening

The 3rd sangenjaya cinema carnival
 / Incentive Award (Yoshihiko Matsui selected)

YCAM 10th FILM by MUSIC
“Video Competition for Fictitious Film Music”
 / Winning (Ryuichi Sakamoto selected)

I believe and movies that I believe.
& I believe and movies that I believe.